簡易シナリオ集:魂を削るもの:「第1章 ハンドレッド・コークスの左手」
【導入】
PCの一人(複数でも良いでしょう)が冬の夜、他のPCが集まるクリスマスパーティの会場(それは小さなホテルを借り切ったものです)へ行く途中のことです。コートの襟を立てて街を歩いていると、霧の中から一人の男が、ひどく狼狽した様子で走ってきます。彼は服装などから中流階級に属すると見えます。彼は左手を自分の右手で押さえるようにしており、その右手にはひどく力が入っています。彼はよろめくと、PCにぶつかり、悲鳴を上げて道に倒れこみます。よく見ると、彼の左手は義手であることが確認できます。PCが当時の中流階級以上の人間であれば、彼を放っておくことはできないでしょう。男は気を失っています。気を失っている間に、近所の病院に馬車で運ぶことができます。
男の名前は『ハンドレッド・コークス』という名です。『熱い魂』の持ち主ではありませんので、『コンタクトリスト』に名前を登録することはできません。
病院に男を収容し、気付いたときのために連絡先を告げることで、PCは急いで会場に行くことができます。しかし、ハンドレッド・コークスを病院に運んだPCの荷物には、コークスの手首から先がまぎれ込んでいます。そう、彼の手首から先は、巧妙に作られてた自動人形なのです。
【展開】
ハンドレッド・コークスの左手の目的は、自分の複製を作ることです。実際には自分の複製を作るだけの技術力は与えられてはいないのですが、複製を作ろうと試み続けます。したがって、この手首の巣食った家では、あたかも大きく、頑丈な鉄のネズミがいるかのように家が荒れてゆくのです。
パーティの会場でしばらくすると、PC達には得体の知れない音が聞こえます。金属を打ち合わせるような音や、金属同士をこすり合わせるような甲高い音などです。この音は手首が金属を加工しようとする音です。暖炉の飾り、窓枠、スプーンなどの食器、燭台、その他の金属製品が曲がったり、溶接したように青黒く変色したりと、次第に部屋は悲惨な状況になります。そして、手のようにも見える奇妙な機械がPCの目に映ることでしょう。
突然始まったこの事件をきっかけとして、PCはこの得体の知れない敵と対決することを選ぶでしょう。しかし、この手首を捕らえようとしても、それは極めて難しいことです。なぜならば、この手首は野生動物のようにすばしこいからです。
■作成すべきデータ:ホテルの見取り図
■作成すべきデータ:鉄製の手首の能力など
手首が活発に動き回る(つまり、手首が自動的に動くだけのエネルギーが維持されている期間)は、3ターンです。手首はその後、うずくまって「冬眠」してしまいます。それまでに、コークスに遭遇したPCが、コークスの手首に考えが至ったのであれば、翌朝にでも彼と連絡を取ることができるでしょう。
【結末】
PC側からコークスと連絡を取ろうが取るまいが、翌日の午前中には、コークスから連絡が来ます。彼は落ち着きを取り戻し、彼と彼に関係した人々の遭遇した今回の事件についての説明を行います。そしてホテルに与えた被害については自分の責任であるからと告げます。彼は自分の「眠った」手首を受け取ると、左手に装着し、白い手袋を嵌めます。そして「嫌でなければ」と前置きをしてからその手首についての話を、PCに語り始めます。
イブの夜、ハンドレッド・コークスは自分の義手が自分の意思を持って動きはじめたことでショックを受け、その義手を開発した発明家の元へと街を急いでいたのです。彼の手首は彼の意思とはまるで関係なく、このような事件を引き起こすようにプログラムされていたと主張します。そしてそのプログラムを行った狂える技師にして発明家の名は、「狂える天才発明家にして至高の機械技師」こと『ジョセフ・オーガスタス・デッドエンド』という老人であると告げます。そして、彼は今回のパーティ参加者のPCの全てが、何らかの形で関係を持っている人物です。
コークスは、別れ際に言い残します。「彼の身に何かが起こり、彼は狂気の世界へと旅立ってしまった。彼の発明品は今や彼自身のためにのみ働いている」と。
【備考】
これはこのシリーズへの導入です。コークスと知り合いになることがこの回のメインです。また、既にコークスはこの時点でPCに対して陰謀を働いています。
目次